1.どのような病気ですか?
(IgG4関連下垂体炎)
下垂体は、脳の底部にある小さな臓器で、様々なホルモンを分泌しています。IgG4関連下垂体炎では、下垂体の腫大に伴う頭痛、嘔気・嘔吐、視力・視野障害や下垂体ホルモン分泌の低下に伴う全身倦怠感、易疲労性、食欲不振、意識消失、低血圧、月経不順・無月経、多尿、口渇、多飲など様々な症状が出現します。
IgG4関連下垂体炎のMRI画像(T1強調、Gd造影)下垂体全体、下垂体茎の腫大、比較的均一な造影効果を認める。(矢印)。
本例は、他臓器のIgG4関連疾患の治療中に、IgG4関連下垂体炎を発症して、下垂体機能低下症、中枢性尿崩症をきたした。
(IgG4関連甲状腺炎)
甲状腺は、頸部にある蝶のような臓器で、甲状腺ホルモンを分泌しています。IgG4関連甲状腺炎では、甲状腺の腫大に伴う頸部の腫脹、頸部痛、呼吸苦、嚥下障害や甲状腺ホルモン分泌低下に伴う耐寒性の低下、徐脈などの症状が出現します。
IgG4関連甲状腺炎の超音波(エコー)画像。甲状腺の両葉はびまん性に顕著に腫大し、内部は低~無エコー。
(IgG4関連肥厚性硬膜炎)
硬膜は、脳や脊髄を覆う硬い膜で、脳や脊髄を外傷や感染から守る役割を担っています。IgG4関連肥厚性硬膜炎では、硬膜に炎症が起こり、頑固な頭痛、難聴、視力障害、ふらつき、手足の麻痺、けいれんなどの症状が出現することがあります。
2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?
IgG4関連下垂体炎の厳密な頻度は不明ですが、下垂体機能低下症の4%程度に認められたとの報告があります。
IgG4関連甲状腺炎の厳密な頻度は不明ですが、自己免疫性膵炎患者の約19%に甲状腺機能低下症を伴うことが報告されています。
IgG4関連肥厚性硬膜炎の厳密な頻度は不明ですが、自己免疫介在性肥厚性硬膜炎の9%程度に認められたとの報告があります。
3.診断・治療法にはどのようなものがあるのですか?
(IgG4関連下垂体炎)
(IgG4関連甲状腺炎)
診断は、臨床症状に加え、血清IgG4の上昇、内分泌検査によるホルモン分泌の低下、画像検査による臓器腫大、病理診断により行われます。診断には病理診断が最も重要ですが、対象臓器の生検が困難な場合は、他臓器の病理診断所見を用いることがあります。
治療は、ステロイドが用いられます。IgG4関連下垂体炎については、ステロイド投与により速やかに腫大が改善することが多いですが、内分泌機能の改善については報告によりばらつきがあります。IgG4関連甲状腺炎については、頸部腫瘤の縮小や甲状腺機能低下症の改善が報告されています。
(IgG4関連肥厚性硬膜炎)
頑固な頭痛を含めた臨床症状に加え、血清IgG4の上昇、頭部MRI検査 (造影) による肥厚した硬膜の存在、さらに他の疾患を除外した後、診断されます。一般に、IgG4関連疾患の診断には病理診断が最も重要ですが、硬膜は生検が困難な場合が多いため、他の臓器の病理診断所見を用いることがあります。治療は、ステロイドが用いられます。
4.この病気の原因はわかっているのですか?
IgG4関連疾患の原因はいまだ不明です。
眼・内分泌・神経疾患分科会 竹島 健 / 河内 泉